2012-05

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旧車ハーレー:純正との付き合い方

半年以上のご無沙汰ですが、よくある仕事が多忙ということでご理解を。

pan 49 2


やはりほぼ半年ぶりに千葉県山武市成東のマイルストーンに行きました。ディストリビューターの修理とキャブレータの掃除をお願いしてきました。そこで純正の旧車との付き合い方という話になりまして…

よく旧車のフェンダーとかを触って厚みを確かめる人がいますね。「触ってみて分厚い鉄がいい」という風潮があるようです。ただし、昔の鉄が分厚かったのは、当時の技術水準ではある程度の強度を確保する上で、それだけの厚みが必要だったためです。今日の技術なら、同じ強度を持つ上でもっと薄い鉄板で済みます。ですから、「フェンダーは分厚くないとよくない」という発想はちょっと考え違いな気がします。現代の技術のよいところはもっと活用していいんではないでしょうか。

一方で、製作当時のままで稼働すべき場所というのもしっかり存在し、それはやはりエンジン回りでしょう。例えば、「旧車のオイルはシングルグレードの50番か60番を使うべき」という原則は今でも有効です。当時は、オイルといったらそれしかなかった。自動車でも建設機械でもそれが汎用であり、米国全土のどこれも手に入るオイルでした。

シングルグレードの50番と60番は、大小の粒子がまちまちに詰まっている粘っこいオイルです。旧いハーレーは、シリンダーとピストンの間の隙間が大きく、だからこそこうした粘っこいオイルが使われたわけです。現代の新車はこの隙間が小さいので、それに合わせた現代の新車用のオイルを旧車に用いると、強い摩擦が生じて破損の原因となります。

ということで、エンジン回りは当時のスタイルを維持すべきなんでしょうね。その当時のエンジンの特性を最大限に生かす上では、キャブやディストリビューターは当時のメカニズムに近いものがいいと思います。一方で、エンジン回り以外は、当時の外観を維持しながらも、現代技術を駆使して製作するのが合理的なのかもしれません。

それから、フレームとエンジンの刻印ですが、ハーレー本社がフレームに刻印するようになったのは1970年からであり、1969年まではフレームに刻印がありません。それでは、私の1949年式のフレームにある打刻はなにかというと、日本の陸運局が真贋を調べたうえで「職検打刻」を施したわけです。

陸運局には、ハーレー本社が作成した初期モデルからのすべてのモデルの詳細な仕様を記載した分厚い本があり、こに基づいて陸運局は鑑定団なみの調査をして真贋を判定するそうです。

それにしても、モノによっては80年近く前のバイクが、純正として新たに日本で車検を取得できるという世界がすごい。当時のアフターパーツを今でも製作するメーカーが存在するという、米国の事情というのは世界でも非常にユニークではないでしょうか。1953年にライバルだったインディアン社が倒産し、その後は大手バイクメーカーはハーレーしかなかった、という米国の特殊な事情がこうしたアフターパーツ製作の伝統を生き残らせた背景でしょう。

インディアンは最近復活して新車が出てますね(ビンテージが買えるくらい高い値段ですが)。ただ、旧いインディアンの場合、パーツを取り寄せようにもハーレーより相当時間がかかりそうだし、レストアやリペアを出来るショップの数も日本では限られます。

パーツのストックやリペアの安易さという点では、旧いハーレーは、米国内では必ずしも「旧車」とはありませんね。日本でも「新車とは違う、もう一つ別のハーレー」として新たな産業化しているようです。

塗装で当時の味を出すことも可能です。私のバイクの色は濃いブルーですが、当時と同じ色を出すためにマイルストーンが用意した色です。写真ではなぜか明るめに映りますが、実物はこれより濃いめです。塗装後にサンドブラストなどの技術で、年代なりのヤレを加えています。1970年代のショベルのツアラーなら、フェンダー・ギターに用いられているような「キャンディ・アップルレッド」や「レイクプラシッド・ブルー」などの色が鮮やかでいいと思いますが、1950年代以前の年式にはこうした地味な色がお勧めです。ヘルメットも光沢入りよりマット仕上げのほうがいいかな。

pan 49 sheet


サドルシートは当時もの。皮が傷んで破れたところは、ゴムで補修してもらっています。これは全部ゴムになるまで使い切るつもりです。ここだけ新しいと全体のイメージが変わってしまいますので。

総合すると、エンジンとフレームさえ生きて入れば、パーツは部分によっては届くのに数カ月待つことはあるけど、いくらでも補充が可能。そしてリペアの専門技術も日本に定着している。その気になればいくらでも時代をさかのぼることができる。旧いハーレーに乗るって、往年の機械で現代を走ることが可能な、わくわくするホビーエリアですね。


1948年のパンヘッド

2回目の車検が近付いていたので、先月、千葉県成東市のマイルストーンにバイクを預けに行ったら、1948年製パンヘッドが製作中でした。私のバイクは1949年製なので、それより1年先輩ということになります。

Pan 48

記念すべきパンヘッド第1号となる1948年製は、通称「ヨンパチのパン」といわれる超人気機種。エンジンだけ、それまでのナックルヘッドからパンヘッドに変わっただけでその他のスペックはほとんどナックル時代と同じ。すなわち、ナックル時代のスプリンガー・フォークにナックル時代のフェンダーを装着したモデルです。

だいたい、旧車の店頭の販売価格でのランク付けでも、一番高いのがナックルで、次がハイドラグライド、これにデュオグライドが続き、それからショベル、最後にエボとなるようです。ところがヨンパチの場合、ハイドラよりはナックルに価格が近い。

私の場合、ショベルから乗り換える時に、ハイドラグライド第1号となった1949年モデルを最初からターゲットにしていたので、あえてヨンパチを探そうという気がなかったのですが、こうして見ると、スプリンガーフォークってカッコいいですね。

加えて、なんともレトロなダッシュメーター。

Pan 48 meter

見れば見るほど欲しくはあるのですが、今乗っている1949年に愛着があり過ぎて、なかなか乗り換えるという気持ちにはなりませんでした。フットクラッチのコツをつかんだり、キック1発で始動したりするのに、数か月を要した思い出がありすぎて、本当に飼いならすのに骨の折れたものほど愛着ひとしおなので。追加でもう1台というならともかくですが。

ところで、1949年製のスプリンガー・フォーク装着のパンヘッドというものが存在するそうです。というより、新しいエンジンが発表された直後の過渡期にはよくある話なのですが、1949年になってもヨンパチが作られていたということ。ただ、エンジンとフレームには1949年の刻印がしっかりついているので、「亜種」のような扱いを受けているわけです。

モノの本には、「ナックルは47年まで、ヨンパチが48年で、ハイドラは49年から」と書いてあるせいで、1949年のスプリンガーとなると、買い手が引いてしまい、バイク屋さんもあえて在庫として仕入れにくいようです。カタログ通りでないからちょっと気味が悪いというところでしょうか。

ちょっとニュアンスは違うけど、パンからショベルに移行する際の「パンショベル」(エンジンの腰下がパンで、腰上がショベル)みたいなものかもしれません。パンショベルも日本では、買い手がつきにくいようです。恐らく、当時の米国では、新しいエンジンが発表されても自分の古いものを乗り続けたくて、調子の悪い部分だけ新しいエンジンに変えたとか、あるいは、自分はスプリンガーのままでいいし油圧フォークは高いから付けなくていい、とか、店頭でかなり融通が利いたのではないでしょうか。アメリカのメーカーらしい、アバウトさというか、そういう発想はとても微笑ましく思います。

私としては、「将来的に売る時に売りにくい」という発想があまりないので、そういう「亜種」に出会ってみたいという気持ちが強いです。





Ashtonのパイプ(その2)

多忙+体調悪しで随分ごぶさたしてしまいました。Ashtonについて書きかけだったのでキャッチアップします。残念なことに、ビル・テイラーは2009年9月にお亡くなりになってしまいました。下の写真は、2008年に創業25周年記念モデルとして発売されたパイプです。

Ashton Aniv

いつもより多少長めのシルバーバンドに、ashton家の紋章が刻まれ、それを1983と2008という2つの数字が挟んでいます。オーソドックスなサンドブラストのビリヤードをアニバーサリーモデルに選び、専用ケースを付けるところがとても気がきいています。

なお、Ashtonの製作年を知るための刻印についてですが、数字に80を足すとよい。すなわち、17なら1997年で、27なら2007年です。

ビル・テイラーがなくなっても、Ashtonブランドは、彼と30年間一緒に仕事をしてきたJames Craig氏によって受け継がれています。オイルキュアリングもそのまま。下の写真の2つのフルベントは、左がビル・テイラーの2005年製、右がジェイムズ・クレイグの2010年製です。

Ashton FB

Ashtonに関して、私が物足りなく感じていたのは、ステムに優美さが欠けているという点でした。特に2000年代中ごろに入ると、エボナイトとアクリルの混合とされていたAshtoniteという材質も、普通のアクリルとほぼ変わらない歯ごたえとツヤになってしまいました。もともとゴツめだった吸い口先端も、さらに荒削りになってきていました。ステムのカーブする部分も、(上の写真の左のパイプを見ればわかると思います)見た目に優美とはいえません。

こうした点は、多くのスモーカーも感じていたのではないかと思います。ジェイムズ・クレイグの代となってから、ステムはかなり優美になりました。私はこの1本しか吸っていないので、一般論化したくはありませんが、オイルキュアリングの風味もそのままです。ただ、このステムが不細工と評した左側のフルベントですが、私の持っているAshtonの中では一番旨い。

ジェイムズ・クレイグの代になってから、シェイプにも今まで見なかったものが多数出ており、ステムも改善されていますので、今後に期待したいと思います。

Ashtonのパイプ

前に、安いのに旨いパイプとしてFerndownを挙げましたが、それに劣らないのがAshtonパイプだと思います。ダンヒル社に14歳のときに入社し、24年間勤め上げたあと、1983年に自分のブランドを立ち上げた William Ashton Taylor (ビル・テイラー)によるもの。彼を有名ならしめたのは、ダンヒル社が「コストがかかりすぎ」という理由でやめてしまった「オイル・キュアリング」という製作方法を維持したこと。これは、ブライアーのプラトーをオイルで煮込んむことにより、内部の樹脂を掃き出したもので、その分ブライアーがドライかつ軽くなります。

現時点でこのオイル・キュアリングを施している製作者としては、このAshton と Lee von Erck氏が挙げられます。喫味の特徴としては、Ashtonといえば Nutty と言われるように、香ばしいナッツの香りがすること。また、大きなパイプなのに異常に軽くなります。ただ、香ばしさと軽さという点では、Lee von Erck のほうが極端ですね。

Ashton は、作者がダンヒル出身とあって、ブリティッシュ・パイプの伝統を守るスタイリングです。下の2本は、1990年代後半のもの。

Ashton 90 1

手前にあるのが、Sovereign という最高級グレードのストレート・グレインのシリーズ。後ろにあるのが、Pebble Shell というシリーズです。

Ashton 90 2

後ろのペブル・シェルは、ビル・テイラーが確立した製作方法で、まずラスティックを施してからサンドブラストで仕上げるもので、ちょうど Larry Roush のスペシャル仕上げのようなもの。普通のサンドブラストと比べて、深くてゴツい仕上げになるのが特徴です。普通のサンドブラストは下の写真のローヴァットのような、Old Churchというシリーズ。

Ashton oc

いずれも、大きさの割にとても軽いです。ステムは、ビルが Ashtonite と名付けた、エボナイトを含有した樹脂。普通のアクリルと比べて、多少柔らかく、ツヤも落ち着いた感じ。ただ、上の2つのダブリン・シッターは、吸い口がゴツいので、私は口ではくわえられず、手で支えています。ローヴァットのほうはとてもくわえやすい。

煙道は広めです。Roushよりも広めだと思います。上のSovereignのダブリンなどは、内径が結構大きい。最上部で2.5センチあります。円錐形の内部ですが、下のほうまで結構広い。だから、煙道が広いせいもあり、トップのほうは勢いよく燃えます。フルのブレンドを思い切り味わいたいときはこれを吸っています。





パイプの吸い方:葉っぱの詰め方

さて、葉っぱの詰め方ですが、これには定番というか伝統的なルールに従ったほうがいいでしょう。パイプショップで教えてくれる、「底のほうはゆるく、上のほうはちょっときつく」というのは正しいと思います。

アルフレッド・ダンヒルの有名な言葉として、(うろ覚えで間違っているかもしれませんが)「下の1/3は小指で詰め、真ん中の1/3は中指で詰め、上の1/3は親指で詰める」というのは、上のほうほどきつく詰めるという意味でしょう。なぜなのかの説明はよくわかりませんけど、下のほうに葉っぱどうしの間隔があるほうが呼吸がしやすく、吸い始めの上のほうが良く燃えるからではないでしょうか。実際、上から下まできつく詰めたら呼吸ができないでしょう。吸って行くに従って燃焼面が自然に下に移動してゆく過程で、下が緩いほうがよいのだと思います。

どの程度、上をきつく詰めるかという程度が非常に難しいわけですが、私が好きなのは「ヘル・フランク・メソッド」です。ドイツ人 Achim Frank 氏が世に知らしめた方法で、ニューヨーク・パイプ・クラブのウェブサイトに写真付きで図解されています。同クラブのサイトのトップページに掲載されていますので、クリックして見て下さい。

私の場合、これを大ざっぱにやっているだけですが、やり方を説明すると:

1)葉っぱのうち大き目のものを選んで(間隔を広げるためです)、ボウルにポロポロと落とし込む。トップのリムから盛り上がるくらいまで重ねる。

2)残りの葉っぱを思い切りぎゅっとつかんで、見た目にボウルの大きさと同じくらいの量を指でコルク状に圧縮する。

3)それをボウルトップにあてがい、葉っぱの周囲を押しつけながら、下に向けて押し込む。この時、故意に下方に押しつけることなく、周囲を中心に向けて圧迫することで、自然に下にゆくようにする。ちょうど、ワインやシャンパンのコルクをボトルに入れる感覚。

4)葉っぱが全部ボウルに入ったら、上の表面をならす。この時は、多少親指で心持ち下方に押しつけてもよい。

こうすると、親指がスポンジ状の弾力を感じるはずです。そうしたら、ステムに口を付けてちょっと吸ってみて、呼吸がスムーズかを確認します。あとはまんべんなく表面に火を付けるだけ。

このスポンジ状態を作るには、ほどよく葉っぱが乾いてないと難しい。

なお、私が下半分に大きな葉っぱを持ってくるのは、上半分に小さい葉っぱのほうが良く燃えるからです。それから、パウダー状になった細かい葉っぱのカスはボウルに入れずに全部捨てます。焦がす原因なので。

それから、「ブレークインの際にボウルに半分しか葉っぱを入れない」という習慣があるようですが、正直いってよくわかりません。カーボンが十分付いていない状態で長時間吸うとボウルが過熱されすぎて焦げるリスクがある、という配慮でしょうか。

わかる気もしますが、ボウルの内側に人工カーボンが付いていないパイプを最初に吸う場合はやめたほうがいい気がします。ボウルの内側の表面をマッチで焦がすリスクがありますので。私は人工カーボンが大嫌いで(変な味がするので)、表面がつるつるのものしか買いませんので、初めて吸うときからヘル・フランク・メソッドで吸います。


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